致死量の毒を持つが、高級食材のフグ。気候変動によりハイブリッド種が生まれ、それが日本の食卓を危険に晒している。

青酸カリよりも強い毒のテトロドトキシンを持つ危険でユニークな食材のフグは何千年もの間、日本の珍味として評されきた。

日本の瀬戸内という地域はフグの卸売市場の本場で1kg30,000円(約265ドル)で取引されている。地元の料理人は、毒を正しく処理しフグを安全に提供出来るよう「ミガキ」と呼ばれる調理訓練を2~3年受ける。フグを調理するには免許が必要だ。昔はフグを食べて多くの人が命を落としたが、現在は厳しい規制により、その数は激減していた。そんな中、一昨年、蒲郡(愛知県)のスーパーマーケットで毒が処理されていないフグが売られ地域住民に警鐘が鳴らされる、という事態が起こった。これは近年、問題視されている交雑種によるものだ。

フグは種類によって、また生息水域によって毒を持つ部位が違うため日本の法律と各地域の条例によって取扱いのルールが定められている。種類や産地によって毒性や処理方法が異なるのだ。厳しい取り締まりと細かい規定でフグによる中毒事故を防いできたが、気候変動の影響で食の安全を保つのが難しい状況が起こりつつある地球温暖化による海水温の上昇で北方のフグが冷たい海流を求めて回遊するようになり、これが交雑種(=ハイブリッド種)を生む原因となっているのだ。何が問題なのか。交雑種は体のどの部位に毒を持つのか特定が難しい点と、更に厄介なのは原種と交雑種の見分けが非常に困難な事である。そのため、この交雑種の取引きは禁止さており、瀬戸内の漁師はこれらのフグを船上で判別し大量に廃棄しなければならないのが現状だ。もし、この交雑種が市場に出回ってしまえば、毒を完全に処理していないフグが食卓で提供されてしまう危険がある。どの部位に毒を持つか特定出来ない交雑種のフグを捌くのは免許を持つ調理人にも難しい。

元々、フグ自体は無毒だが、貝を捕食する過程でその有害物質を体内に蓄積し卵巣や主に肝臓に毒(テトロドトキシン)を有するようになる。人がこの毒を摂取すると、まず神経系を攻撃され筋肉や呼吸器官が麻痺し、毒の量にもよるが、1~24時間以内に人工呼吸装置でケアを受けないと死に至る。毒は時間の経過と共に体外へ排出されるので、8時間生命を維持出来れば回復するが、毒の量が多ければそれだけ即死率は高くなるので医師の診察と適切な治療を一刻も早く受ける必要がある。現在、フグ毒に対する確実な治療法と解毒剤はまだ見つかっていない。

こうしたリスクがあるにも関わらず、日本ではフグは高価な食材で、人々はその味に夢中だ。刺身・唐揚げ・チリ鍋・ヒレ酒等、様々な調理方法で提供されている。特に休日期間には良く売れるらしい。しかし、交雑種の存在はこの需要に影響を及ぼしかねない。現在では起こらないだろうが、過去の日本史においては16世紀に豊臣秀吉が多数の死者が出たためにフグ食を全面禁止にした時代かある。フグは何千年もの間、日本で食されてきた歴史がある。近年、交雑種のフグが問題になっているが、この食文化が絶える兆しはまだ無い。

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